PRESS #11 切磋琢磨し合える場を求めて-「金沢大学ディベートサークル」の挑戦

皆さま、明けましておめでとうございます。旧年中はCoDAの取り組みに多大なるご理解とご協力を賜り、ありがとうございました!本年も何卒よろしくお願いいたします。

さて、新春初回のPRESSでは、インタビュー記事を扱います。今回は「金沢大学ディベートサークル」の皆様にお話を伺い、ディベートを始めたきっかけ、ディベートの魅力、サークル活動における課題や工夫などを思う存分語っていただきました。

 

関東圏の選手の多いディベート界でコンスタントに大会に出場し、先日の全日本大会では見事審査員特別賞にも輝いた金沢大学ディベートサークル。そのモチベーションの源泉や、取り組み継続の秘訣はどこにあるのでしょうか。

ディベート大会への参加を考えている大学生の方や、競技人口の少ない地方でディベートに取り組まれている皆さまにとっては、特に必見の内容です!

 

金沢大学ディベートサークルの活動風景

ほぼ全員がゼロからのスタート

―― 大学生ディベーターの中には中学・高校からディベートの大会に出場していた方も多いのですが、金沢大学の皆さんはいつ頃からディベートを始められたのでしょうか。

大学入学後に始めた人がほとんどです。現在、サークルには18名が所属しているのですが、中学・高校で経験していたのは1名だけですね。英語ディベートを含めても経験者はわずか2名です。

 

―― ほぼ全員がゼロからのスタートだったんですね!大学でディベートを始められたきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

法学類の場合、毎年4月のオリエンテーションでサークル紹介があるので、それをきっかけに入部した人が多いですね。ほかの学類の場合は、新入生勧誘のためのチラシやビラを見て興味を持ったケースが目立ちます。また、新歓期にTwitterを集中的に更新したところ入部につながったという例もあります。最近は更新が滞ってしまっているのですが…(苦笑)

―― ディベートサークルで活動してみようと思った決め手は何だったのでしょうか。

ディベートで培われる能力を先輩方が語ってくれたのが大きかったですね。論理的思考力や、資料を収集・分析する能力、スピーチ技術といった例を具体的に挙げてくれたので、何を習得できるのか明確に思い描くことができたんです。また、受験勉強では小論文の対策に取り組んでいたのですが、その過程で様々な社会問題への理解を深めていたこともあり、「ディベートってなんだかおもしろそう」と感じられました。

 

実力を試し、伸ばす機会を求めて大会に参加

―― 金沢大学の皆さんは新人大会や全日本大会にも意欲的に参加されていますが、大会に出てみようと思われた理由は何だったのでしょうか。

せっかくディベートという競技を始めたからには、ほかの方と対戦したり指導を受けたりする機会が欲しいと思っていました。ところが、北陸地方には継続的に活動している大学生のディベートサークルがなく、それならば首都圏の大会に出ようということで新人大会や全日本大会、最近ではアビシニアンカップにも出場しています。1年生の場合、ディベートを始めて間もないメンバーばかりなのですが、「12月の全日本大会まで待ってはいられない」と勢いよく6月の新人戦に飛び込んでいますね(笑)

 

―― 皆さんのディベートへの熱意が伝わってきますね!では、大会に向けて準備されるうえでどのような課題があったのでしょうか。

やはり、一番大変なのは練習試合の相手がいないことですね。対面ではもちろん、Skype上での試合も大会直前の数回程度に限られてしまいます。Skype対戦の相手は多くが首都圏や京阪神の方なのですが、まれに北海道や九州の方もいらっしゃって、私たちと同じように対戦相手を渇望されています(苦笑)。大会前のSkype対戦の機会がもう少し多かったり、通年でオンライン対戦できる場があったりすると、地方のディベーターのモチベーションがもっと高まるのではないでしょうか。

 

―― 練習試合の場数を踏めないというのは地方の大学ならではの難しさですね。ほかにはどのような課題がありましたか。

インターネットが普及したとはいえ、情報面での格差がまだまだ大きいように感じます。リサーチのために大学の図書館で論文を検索しようとしても、論題によっては首都圏の大学にしか資料がないこともよくあります。

また、先ほどの練習試合の不足ともかかわるのですが、戦略や証拠資料のトレンドが把握しづらく、大会本番で対戦相手から出された議論や資料がまったくの初見(!)ということもありました。

 

―― 本番でいきなり見たこともない議論や資料が出てくると焦ってしまいますね(苦笑)。そういった議論面での情報はどのように収集されていますか。

著名なディベーターの方がブログやTwitterで積極的に情報を発信してくださっているので、それらに目を通すようにしています。試合のトランスクリプトや解説についても非常に勉強になっていますので、こうした試みを今後も継続いただけるとありがたいですね。

 

―― こうした課題と向き合いながら大会に参加されているわけですが、大会を通じて得られたものや学んだことについてお聞かせください。

実感したのは経験者との実力の差ですね。立論や反駁がよく練られているのは当然なのですが、何よりも質疑が非常に鋭く的確だったので圧倒されました。事前の準備に加え、その場での臨機応変な対応力が欠かせないことを痛感しました。

対戦相手のスピーチや議論から学んだことも数多くありました。強い選手はスピーチの構成がうまく、どうやって勝ちにいくのかという戦略が明確なんです。試合を録音させてもらい、後で部員と一緒に聞き直しながらノウハウを共有し、パートごとの役割やスピーチの型を身につけていきました。

 

―― 試合の経験を徹底的に活用されているんですね。ほかに大会で感じられたことや気づいたことはありましたか。

「新人」大会なのに周りがみんな経験者だったのは衝撃的でした。閉会式で「未経験の方はいらっしゃいますか」と聞かれて手を挙げたら、私たち4人しか手を挙げていなくて(苦笑)。中高で経験のあるディベーターとの対戦は私たちにとってはとても勉強になったし、もっとうまくなりたいという意欲も高まったのですが、せっかくディベートに関心を持ったのに新人大会で心が折れてしまうケースもあるのではないかと思います。将来的には、私たちのような純粋に未経験な方向けの大会を作っていただけたら嬉しいです。

 

ディベートは最高の学びの機会

―― お話を伺う中で、金沢大学の皆さんのディベートに対する熱意が印象に残りました。皆さんがディベートを続けている理由やモチベーションについてぜひお聞かせください。

ディベートは、自分にとって未知の事柄に触れられる素晴らしい機会だと思います。様々な論題について多角的な視野を得られますし、一人では考えもつかないような議論を学ベるのはとても貴重な経験ですよね。

また、サークルのメンバー同士でもいい影響を与え合っています。他のメンバーからは、自分と異なる意見を受け入れる謙虚な姿勢、頭の回転の速さ、考えを言語化するうまさといったものをぜひ学び取っていきたいですね。

 

―― 他大学のディベーターだけでなく、チームメイトからも学ぼうという姿勢はぜひ見習っていきたいですね!最後に、今後の抱負を教えてください。

私たちのほとんどは大学からディベートを始めた未経験者で、大会に参加するまでには様々な困難もありました。しかし、大会に出たことでディベートの楽しさ、面白さがわかり、何としても大会で勝ちたい、いい試合をしたいという意欲が湧いてきました。大会に出るからには、在学中に一度は悔いのない試合をしてみたいです。

また、卒業後はディベートで身につけた多様なスキルや能力を発揮し、社会で活躍していきたいです。大会で審判をされている社会人の方から、ディベートで得たものが仕事でどのように生かされているかお話を伺う機会があればぜひ参加してみたいと思います!

 

―― 金沢大学ディベートサークルの皆さん、ありがとうございました!