【全日本2019特集】大学の垣根を超えたディベート活動②

前回は、大学の垣根を超えたディベート活動についての阿部さんからの寄稿を紹介させていただきました。今回も同様のテーマで、宍戸さんから寄稿をしていただきました!「異なる大学でチームを組むことの楽しさや不安」を書いてくださった阿部さんに対して、宍戸さんは「異なる大学でチームを組んだ際に工夫した点」を中心に書いてくださっています!是非ご覧ください。


こんにちは。大学二年生の宍戸です。
 本稿では大学の垣根を超えたチームでの大会出場について、事前準備で工夫した点を中心にお伝えで きたらと思います。
 私は昨年度の第 18 回全日本大学ディベート選手権大会に、他大学の友人とともに参加しました。ディ ベート甲子園を通じて切磋琢磨しあった者どうし、お互いの得意分野などをよく把握しており試合しやすいだろう、とくにパートナーである彼は、高校時代の担当パート上、私との間で役割分担がしやすいだろうといった点がチーム結成に至った大きな理由でした。
 しかし、各所のディベート大会で戦績を上げている猛者ならまだしも、高校を卒業したばかりの私にと っては、そのようなチームを組んで大会に参加することになんとなく不安もありました。 サークルの助けを借りずに大学の垣根を越えてチームを結成することには、同じように漠然とした不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。ここではやはり不安を抱えていた私の立場から、実際の経験を、僅かではありますがお伝えできればと思います。大きく、「議論構築」「試合経験」「環境整備」の三点に分けて述べていきます。

①議論構築にあたって
 大学サークルの中でのチームであれば、サークル活動の機会や部室などを利用して共同で原稿を作成したり、多人数でリサーチしたりと、環境を大いに活用して議論を構築することができます。しかし、サークルに所属していないチームではそのような機会に恵まれません。

 そこで私たちは、まずはっきりと役割分担を行いました。原稿の担当箇所、書籍調査の分担を明確にしていきます。こうすることで、互いの進捗を常に確認し合うことができない環境でも準備を進められるようにしました。そのうえで、定期的な会議を電話等で実施。調査の中で得た見地を交換し合い、議論の方向性を決定していきました。

 独力で進めていく部分と、共有する時間をこのように線引きしたことで、うまく議論作成を進められたのではないかと思います。また、パートナーと私の間で得意な仕事がはっきりしていたことも、この方針で議論を作るにあたって奏功した部分だったとも感じています。

②試合経験を積むうえで
 サークル所属のチームは、サークル内でいつでも練習試合が実施できるのに対し、そのような環境がないチームは、休日の練習試合を待ったり、剣豪のように他チームに勝負を仕掛けたりするほかはないように思えます。

 しかし、CoDA 運営の方で主催してくださったオンライン練習試合というチャンスがありました。昨今は遠隔地からの参加チームなどもあり、今後もこうしたタイプの試合が盛り上がっていくのではないかと思われます。

 また、一度の試合であっても、きちんと有効活用すればかなり有益なフィードバックが得られます。私たちも練習試合後には前述した会議を実施し、議論の再構築、試合方針の修正などに努めました。絶対的な試合数が少ない場合でも、きちんとした意識で試合に臨めば得られるものは大きいかと思われます。

③環境整備の工夫
 調査段階から試合中に至るまで、効率よく証拠資料や原稿を参照できる環境は重要です。役割分担を厳格にする弊害として、所有している証拠資料や原稿に対する認知が甘くなりがちな超大学チームでは、特にそのような工夫が必要となっていきます。

 そこで私たちのチームでは、クラウドサービスを利用して資料集を共同編集可能な状態にしたり、スプレッドシート作成ソフトを利用して原稿をリスト化、通し番号を付したりと、「機械化」戦術を採用することで効率よく情報共有できるような環境を整備しました。このような環境を整えれば、情報共有機会に乏しく、試合経験の浅いチームでも安定した状態で試合に臨むことができるかと思います。

まとめ
 サークルという環境に頼ることができないチームでも、種々の行程を計画的に進めれば、問題なく大会に参加することができるでしょう。またリアルな環境に依存しなくても情報共有等が可能な現代社会のシステムは、サークルに頼らず試合準備を進める助けになると思います。

ところで、曖昧な部分を残さないための情報共有と役割分担が必要となるのは、どのチームでも変わらないのではないでしょうか。特にディベートは、本来なりゆき任せの協働や、阿吽の呼吸といったものに依存してはならないスポーツだと思います。大学卒業後もディベートを続けていくことなどを考えると、むしろ、ここまで述べてきた工夫をある種「強いられる」非サークルチームは、適切な環境とさえいえるのかもしれません。


宍戸さん、ご寄稿ありがとうございました!次回は、特に「大学からディベートを始められた方」へ向けた記事となっております。次回も是非ご覧ください!